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「お客さん、コーヒー飲んでくれなかったね…」
その発言と、直立した彼女がエプロンを身に付けている事から察するに、
この喫茶店のマスターかウェイトレスか、少なくとも店員である事は間違いなかった。
であるにも関わらず、テーブルに座る少女の足癖の悪さには一切触れようとしない。
「アカネちゃん、僕のコーヒー…美味しく無いのかな?」
アカネちゃんとは、痩せた少女の名前なのだろう。
そして自身を僕と呼んではいるものの、
動物の様に無垢な顔付きや、適度に筋肉の付いた健康な体付き、
健気な声色などは紛れも無く女性そのものである。
「そんな事無いわ」
「でも、一口も飲んで無いよ?」
「チップをくれたわ。きっと香りが良かったのよ」
ベンダが残して行った紙幣一枚には、このカフェのコーヒー1杯以上の価値が有る。
その差額を、アカネはチップと表現した。
「そっか」
「ローブ、そのコーヒーあたしが貰うわ」
店内にはアカネの他にもう1人しか居ないので、このもう1人の名がローブと言う事になる。
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