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まさか隣に引っ越してきた谷田部さんが洋一くんだとは…。ここまで妙な縁が続くのはすごいことだ。
あれ?でも待って。
確か洋一くんにはお兄さんと弟がいたんじゃなかったっけ?綺麗なお姉さんがいるとは聞いてない。
「んんん?」
首を傾げたサラに洋一が聞く。
「どーしたよ、サラ」
「洋一くんにはお姉さんもいるの?」
「オレには姉貴なんていねーけど…」
「うちに挨拶にきたのは綺麗な女の人で、今日来るときエレベーターで一緒だったよ」
「………」
洋一くんは突然黙ると、「はあ、」と溜息をつく。
「そりゃ、オレの兄貴だ……」
「えっ!お兄さん…!?」
「兄貴はモデルの仕事してて、事務所の決まりで家を出るときは女装してんだ」
「へえ~…、大変だね」
「そーでもねーぞ…。兄貴の女装は趣味の延長線だな」
洋一くんは遠い目をして言った。
「お兄さんは女の子の格好が好きなの?」
「昔はそーでもなかったんだけど、今は否定できねー…」
「ふーん」
うちのお兄ちゃんとは全然タイプが違う。
サラは持ってきていたお弁当を広げた。
「お、今日もウマそーだな」
突然ひょいと手が伸びてきて唐揚げをかっさらっていった。
「わたしの唐揚げ!」と言う間に唐揚げは洋一くんの口の中に入る。
「ウマいっっ!!」
「………」完全に油断していた。
「やっぱ、サラの作った唐揚げサイコー!」
洋一は叫んだ。
「高校に入ってからはないと思ってたのに…」
「女子の集まりにわざわざ入るほどの勇気は持ってねーよ。ほら、オレのパンひと口やるから機嫌直せよ」
ずいっと出されたのは学食のコロッケパン。
「……半分」
「は!?オレはひと口しか食べてねーよ」
「早起きして作るのは時間がかかるの。手作りの駄賃も入れるならコロッケパン半分が妥当だよね」
サラはコロッケパンを半分にちぎってそのまま口の中に入れた。
「おいしー!」
「は、そんならこれも頂こうか」
瞬く間に卵焼きが攫われた。
「あーっ!唐揚げと卵焼きはわたしのお昼ご飯だよ!」
「オレのコロッケパンを半分食っておいて何を言う!」
言い合っているうちに昼休み終了のチャイムが鳴った。
「げっ!もう終わりか!?」 「わっ!昼休み終わっちゃう!!」
2人は慌てて昼食を口の中に詰め込んだ。
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