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わたしの隣の席に座っている男の子は谷田部洋一くんという。小学校の頃から一緒で中高も一緒。何か縁があるのか、クラスも離れたことはなくてずっと一緒だった。4月のはじめは隣の席か、斜めか、そのあたり。
お互いの家が隣同士の幼馴染みでもないし、恋人でもないけれど、わたしと彼はいつも一緒になる。
「お!早いなぁ、サラ」
「洋一くんが遅いんだよ」
始業チャイムが鳴ってから洋一くんは教室へ飛び込んでくる。それは小学校のときから変わらない。
「いーや、オレは普通だぞ。サラが早すぎるんだ。一番最初に教室入るってどんだけ早いんだよ!」
そう、わたしは教室一番乗り。これは小学校のときから変わらない。わたしにしてみればこれが普通だ。
お互いを名前で呼び合うようになったのは中学1年のとき。奇妙な縁でずっと一緒になる私たちをクラスメイト達が「付き合っちゃいなよ、ヒューヒュー!」とからかったことからだった。
それまで他人同士だった私たちはお互いを意識したけれど、ギクシャクしてしまい付き合うまではいかなかった。
2年生でクラスが別になればそれは思い出となったのだろうけれど、いつも一緒の縁は切れなくて1年間をどうやって過ごしていこうか考えているときに、洋一くんが「お互いを知るために名前で呼び合わねーか?」という提案を出してきた。
わたしはそれは神様からのプレゼントだと思った。洋一くんとギクシャクした関係でいるよりも良い関係でいたいと思っていたから、その提案に乗ったのだ。
それから谷田部洋一という男の子を知ることになった。
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