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ピン、ポーーーン……………
「サラぁー、出てくれー」
お兄ちゃんが叫んだ。
中学を卒業すると両親は海外転勤になり、わたしは高校から駅前のマンションにお兄ちゃんと2人暮らしをすることになったのだ。
玄関のドアを開けると。わたしより年上の大人の人がいた。
「隣に引っ越してきた谷田部です。よろしくお願いしますね」
「いえ、こちらこそっ…、桐谷です…。よろしくお願いしますっっ!」
「うちにもあなたくらいの弟がいるから仲良くしてね」
「は、はいっっ!!」
ドアを閉めるとゲーム漬けのお兄ちゃんがやっと部屋から出て来た。
「誰だったの?」
「隣に引っ越してきた谷田部さん。すごい美人さんだったよ」
「おまっ…!?なんで呼びにこねぇんだよ!」
「ゲームで忙しそうだったから」
「ちくしょっ!次から全部おれが出てやる!!」
谷田部といえば洋一くんと同じだ。明日学校に行ったら、お隣にすごいモデルみたいな美人さんが引っ越してきたことを自慢しよう。きっと羨ましがる。
翌朝。
「それじゃ行ってくるね、お兄ちゃん!会社遅刻しないように」
「あー…ダイジョーブダイジョーブ、いてらー…」
「……………」
こんなんだからお兄ちゃんは女の人にモテないんじゃないのかな。
玄関のドアを開けてエレベーターに乗ると、昨日お隣に越してきた谷田部さんがちょうど後ろから乗ってきた。
「あら!早いわね。おはよう」
「おっ…おはようございますっ!!」
「いつもこの時間なの?」
「はい、谷田部さんもですか?」
「今の仕事になってからはね」
お兄ちゃん、わたしと同じ時間に家を出たら良いことがあったのに……。谷田部さんとマンションの入り口で別れてわたしは学校に向かった。
「おはよー」「おはよう」
「おはよう洋一くん」
始業チャイムギリギリで入ってきた洋一くんに声をかけた。
「おう。…はよ、サラ」
「あのね!聞いてよ、昨日モデルみたいなすごい美人のお姉さんがうちの隣に引っ越してきたんだよ!羨ましいでしょ!?」
ヘヘン!と鼻高々に自慢したが、返ってきたのは心ここにあらずの返事。
「へー…」
「洋一くん……?」
洋一くんはわたしの顔をまじまじと見て言った。
「…まさかな…」
何かボソッと呟いた。
「なに?」と聞くと、洋一くんは「なんでもねーよ」とフイと顔を背けた。
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