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「わたしたちとデートしてほしいんだって!!」
「……はあ!?」
言っておく。オレとサラはデートをしたことは一度も無い。
「なんだか楽しそうだからOKしたよ。いいよね?洋一くん」
いや、ちょっと待てよ…それおかしいだろ!?
「何でオレらがあいつらとデートしなきゃなんねーんだよ!?」
そもそもオレたちは友人の関係で恋人ではない。
「えー、いいじゃん!わたし洋一くんとデートするの楽しみにしてるのに」
にっこり。微笑んだサラに返したオレの言葉は、「…………そーかよ」だった。
「それじゃあ今週の土曜日ね!ありがとう桐谷さん、谷田部君!!」
女子3人が颯爽と屋上から立ち去ると、オレは今朝の疑念を取り払うべくサラに話しかけた。
「そういやサラ、オレ、引っ越したんだけどよ……」
「へぇー、どこ?」
「サラんちの駅からすぐ近くのマンション」
「南口?北口?」
「南」
「わあ!同じだね!それじゃあご近所さんだ!どこのマンション?」
「一番手前の、駅の遊歩道に出られるとこだけど…」
サラの動きが止まった。もしかして同じなのかよ。
「同じマンションだね!洋一くんは何階?」
サラの問いに答えるのが怖い。まさか、まさかとは思っていたが。オレは一気に部屋番号まで言った。
「8階8205」
「…え、……うちの隣…?」
こんなことがあっていーのか、とか、こんな偶然ありえねーとか、オレたちのこの状況では些細なことなのかもしれない。
「…そんなだから……、よろしく…」
ここまで示し合わせたように何もかも一緒なんて。
「うん!よろしくね!」
笑顔で手を差し出してきたサラには気にしている様子は見当たらなかった。
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