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【 一 敗れる 】
およそ千年前、俺は、殺された。
当時、魔界は魔王軍を結成して人間界へ侵攻し、己の領土とすべく人間を破滅へと導かんとしていた。わずかに残った者たちから打倒の声があがり逆に攻め込むこともあったが、魔界へ乗り込んだ者たちが再びその姿を見せることはほとんどなかった。
俺の生まれた街は街道の分岐点にあたったためか、歴戦の猛者がたくさん集まり、魔王軍の襲撃があっても彼らが先頭に立って街を守ってくれた。いずれは彼らのように強くなるのだぞ、と言われて育った。魔王が直接攻めてくるまでは。
魔王は一人でこれまで襲ってきた魔物の群れの何倍も強かった。巨大な魔法を駆使し、炎まで吐き、街を、戦士を、そして俺の家族を焼き尽くしていった。
そんな激しい襲撃に遭い、色々なものが焼かれていくなかで、爆風で体ごと吹き飛ばされ、口の中を灰や砂だらけにしながら気を失った。
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