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参謀役のバンリが珍しく展開に反対意見を述べた。まずは熟考するバンリから見れば、俺は無鉄砲に映るだろう。
「魔族の魔法の中に、死後一度だけ使える伝言魔法がある。人間の知識人にそれを拡大解釈する者がいれば、そのあたりの矛盾は解消されるだろう。そうでなくても、俺の名前が入っていれば信じるさ。歓喜は疑念を払しょくするものだ。特に人間はな」
バンリは穴だらけの俺の計画にあまり乗り気でないのは知っていた。この通達が上手く人間界に浸透し、自らの『敗北』を隠し『勝利』を受け入れたことまで確認してしまうと、最後までつきあう気になってくれたようだ。
「レザ様。本当のところ、ここまで上手くいくことを想定していましたか?」
「もちろんだとも。勝算がなければこんなバクチは打てない」
「……本当ですか?」
「……すまん。たしかにリスクは大きいが、勝算があったのは本当だ」
素直に場の全員に謝る。バンリほか数人が呆れたようにため息をもらす。
「まったく……。自己犠牲と言うか、あなたならではの方法だとは思いますが、失敗したらどうされるつもりだったのですか?」
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