【 九 平和が訪れる 】

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「俺はシギに転生させられ、センサは体ごと魔族化させられた。つまりベースが人間なんだ。もちろん、俺もセンサも、身も心も魔族のつもりだ。あの力は人間の部分を持ち合わせている者には効かない。だから、純粋な魔族には効いても、人間が出自の俺たちには効かなかった、ってわけだ」  この方法は大きな賭けであるのはもちろん、正直、苦しかった。まるで自分が魔族ではないようだからだ。仮に今、人間と魔族が敵対するなら、俺は当然魔族につく。大魔王でなくても。だからこそ、この体が忌まわしい。奴らの力が効かないこの体が。  渋い表情をしているのをセンサが悟り、俺を諭そうとする。 「大魔王さんよ。俺たちゃそのおかげで勝ちを拾って、あいつらの襲撃を止めたんだぜ。もっと胸を張ろうぜ」  センサは俺の気持ちを察したのか、それを特質として考えろと言ってくれている。 「……そうか。そうだな。ありがとうセンサ」 「れ、礼はまだ先なんだろ。最後があるんだろ」  無言でうなずく。そうだ。この力が世界を救ったのだ。そう考えよう。   美少女戦士を追い出して一カ月ほどが過ぎた。魔王軍の補選も終わり、人間界への魔族の再配備も済んだ。この日、最終段階を行うことを魔王軍へ通達した。これですべてが終わるといいのだが。  真夜中、独りになった自分の部屋で術を唱える。夢の中に自分と対象者を引きずりこむ魔術だ。術者に教えてもらった付け焼刃だが、なんとか上手くいった。     
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