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「そうか? ならば、次に訪れた時には、今度こそ数秒で、貴様等五人を殺す。そして、生ける屍として再生させ、その力を、人間を殺すために使ってやろう。自らの意識を持ち、嘆きの表情を浮かべながら大切な者を傷つける人形になるのだ。剣や魔法や拳闘で、腐った世界政府を皆殺しにしてくれるわ」
「な、なにそれ、最悪……」
ノゾミが手で口を抑える。
「その最悪を味わわせてやる。なんなら今すぐそうしてやってもいいぞ」
力を込めて発した一言に奴らは硬直した。ここで致命傷を負わせることも可能だが、何の得にもならない。
「二つ目だ。善良な魔族を人間と平等に見るよう働きかけてほしい」
「はあ? 何言ってんの?」
「我々の調査では、人間界にいる六十七名の魔族がおまえたちによって葬られた。しかしそのうち約半分、三十名は、何の罪もなく、今を平穏に生きていた魔族だった」
「な、そんなの嘘よ!」
「嘘だと思うなら、自分で調べてみることだ。自らが犯した罪をな」
これは魔王たちに調べさせたことで、事実だと考えている。
「人間がすべて善良な民でないように、魔族もすべて悪ばかりではない。そこを理解してもらいたい。もちろん、魔王軍としても、愚かな同胞の粛正に一層の力を入れていくことを約束する。要するに、魔族と人間の橋渡しをしてもらいたい」
「魔族は人間の敵だろう」
まだノゾミには理解してもらえていないようだ。
「いずれにしろ、月の力に意味がなくなる以上、お前たちは戦う力を失い、普通の人間に戻るしかない。そうだろう? ジュン」
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