君にベタ惚れ

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「知らないか? 生物室でいつも生き物の世話してる、生物部部長の津田。別名『いきもの係』って奴」 「あ! アタシ知ってる! いつも生物室にいるキモい系の奴でしょ?」  横で弁当を広げていた女子が口を挟んでくる。 「そう、それ。かなり有名だぜ」 「知らない」 「おい、大桑。あいつはちょっとまずくないか?」  二俣があわてた様子でそう言ったが、俺はその理由もさっぱり分からなかった。 「なんで?」 「だってよ、あいつ、あんまりいいウワサ聞かないんだよ。親がヤクザ関係だって話だぞ」  二俣がこわごわ言うと、大桑は豪快に笑った。 「違うって。俺は警察の麻薬捜査関係って聞いたぞ」 「ヤクザだって。でもって、家で体長二メートルのワニを飼ってて、刃向かう奴はそいつと一緒の檻に入れられて戦う羽目になるって話きいたぜ」 「マジかよ! あ、でも俺も昆虫マニアで、夏休みは東南アジアを放浪してるとかってウワサ聞いた。ワニよりはそっちのがリアルでね?」  二人の全くかみ合わない人物像に俺は吹き出した。親がヤクザか警察で、家でワニ飼ってて、東南アジアにカブトムシ捕まえに行くキモい系? 「何だよ、その学園七不思議みたいな奴」 「あのなぁ、笑い事じゃないんだぞ。ったく、大桑も余計なこと吹き込むなよ」     
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