君にベタ惚れ

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 神経質ぎみの二俣は、指で机をカツカツ叩きながら大桑をにらみつけた。 「しょーがねーじゃん。深山のじいちゃんの遺言なんだから。遺言守らねえと、たたられるぞ」 「大桑、じいちゃんを悪霊みたいにいうなよ! ま、ほかにツテもないし、とりあえずそいつに聞いてみるよ。津田だっけ? 何組なの? 大桑、知ってる?」 「五組だけど、昼休みはまず生物室にいるぜ」 「じゃ、俺、ちょっと行ってくる!」  俺はスマホをポケットに押し込むと、急いで生物室に向かった。  そして俺は津田に出会った。  さっきまでの、生き物を愛おしむようなものとは全く違う、鋭い視線が、眼鏡と前髪の奥から俺にむけられている。  一瞬、津田の顔に見とれていた事を気づかれたくなくて、俺は慌ててスマホを取り出した。 「悪い。その、教えて欲しいことがあったから。魚のことで。生き物のこと詳しいってきいたから。お前、五組の津田だよな?」  そいつはもっさりと頷いた。 「魚……? ああ、そういう事か」  さっきとは違う、ぼそぼそした声で、津田はそう言った。声に含まれていた明らかな警戒心はなくなったけど、なんだか聞き取りづらい。俺はよく声が聞こえるように、津田に近寄った。 「これ、何て魚か知ってる?」     
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