君にベタ惚れ

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 俺がスマホの画面を差し出すと、長い前髪を揺らして、津田は頷いた。訂正。前髪どころか、髪全体が伸びてる感じだ。髪自体はきれいに洗ってあって、サラサラしてるけど、なんか不精っぽい感じが否定できない。女子が「キモい」というのも何となく分かるような感じだ。  近寄って分かったけど、津田は結構背が高かった。たぶん一八〇センチ以上はある。俺が一六八センチだから、完全に視線が上にいくのが、ちょっと悔しい。大桑も背が高いけど、あいつはラグビー部でやたらゴツい。でも、津田は細いせいか、大桑みたいな圧迫感はない。かといって、ひょろ長くみえるほども細くもない。だけど、少し猫背ぎみらしい。おまけに覇気のない幽霊みたいな雰囲気だ。そのせいか、ぱっと見た感じは一七五程度にしか見えない。背が低めなのがコンプレックスな俺としては、少しわけろと言う気分になってくる。 「ベタ。このヒレは、ショーベタだ」  あっさりと答えられて、俺は気が抜けた。思わず近くにあったイスに座り込む。 「大丈夫か?」  座り込んだ俺を、津田は困ったような顔で眺めていた。 「大丈夫。ちょっと気が抜けただけ。なんだ、そんな簡単な名前だったのかよ。ベタ。ベタかぁ。変な名前だな。ベタのショーベタって種類なのか?」 「……クイズか何か?」 「いや実は、俺、こいつの世話することになって……」  津田は眼鏡のブリッジを指でくいっと押し上げた。     
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