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「え? マジ? 千円くらい?」
「最低五千円くらいはするはずだ」
「……えええええ? あんな小さい魚一匹に?」
「君の写真じゃよく分からないけど、色の乗り方がきれいだし、かなりヒレも広がってる。クオリティは、かなり高い子だと思う」
「ごせんえん……」
CD一枚よりも高い魚、ということに、俺は恐怖を感じた。そりゃ犬や猫ならもっとするのは分かるけど、ちっちゃい魚だろ? 俺、金魚すくいの金魚しか飼ったことないし、しかもそいつ、二週間で死んだんだぞ?
「なぁ……俺の代わりに、津田に面倒見てもらうわけにはいかないかな? この生物室でいいから。その、エサ代とかはちゃんと出すから」
ぷかりと腹を上にして死んでいた金魚を思い出して、俺は不安になった。あの魚が、死んだ金魚みたいになったら、じいちゃんに怒られそうな気がした。
「でも、おじいさんが君に頼む、って言ったんだろう? さっき、だからちゃんと面倒みたいって言ったじゃないか」
「そうだけど……」
「僕が育てたら、おじいさんの意思にそむくことにならないか?」
「でも……じいちゃんの大事な魚なら、ちゃんと世話できるやつに見てもらったほうがいいかなって思って……」
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