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津田はしばらく考え込むような表情をしていた。
「それならば、君がちゃんと面倒を見られるよう、僕がサポートする。それに僕はこの生物室の生き物すべてを管理しているんだ。これ以上仕事を増やす事はできない。それに、やっぱりおじいさんのためにも、君が育てたほうがいいんじゃないか?」
そうなんだよな。じいちゃん、苦しいのに、俺にこいつのことを必死に伝えてきた。じいちゃんにとって、こいつは大切な存在だったんだっていうことは、俺にも分かる。
「大丈夫だ。コンテストに出すのでもなければ、多少手のかかる金魚程度のものだ」
だからその金魚を二週間で昇天させたんだ、とは言えずに、俺はうつむいた。
「……仕方ない」
津田は俺のスマホを取り上げて、数字を押した。すぐに津田のポケットから着信音が鳴り出す。
「困ったことがあったら、電話するといい。僕もベタについて、調べておくから」
「え、いいの?」
「乗りかかった船だ。そいつを不幸にしたくないし。体やヒレに白いものがついたり、呼吸の仕方がおかしかったり、とにかく、何か異変があったら連絡してくれ」
ぼそぼそした声といっしょに、俺のスマホが返ってくる。
……もしかしたら、こいつ、意外にいい奴なのかも知れない。
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