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「どうしたんだよ、深山。家でなんかあったのか?」
大桑がポテトを指につまんだままきいてくる。
「あ……じいちゃんが危篤だって。これから病院行くから、ここにいろ、って」
「マジ? 大丈夫か?」
二俣が目を丸くする。
「わかんね」
「とりあえず、アレだ。お前のハンバーガーは俺が引き受けてやるから」
大桑がわざとおどけたように言う。俺を気遣ってくれているのが分かるので、俺も「やらん」とまだ口を付けていなかったハンバーガーにかぶりつく。でも、さっきまで十六歳の放課後の胃袋を直撃していた肉と油のにおいは、どこか遠くにあるように感じられて、口の中にはパサパサした食感だけが残った。
それを無理矢理コーラで飲み下すと、店の外に、母さんの軽自動車が走り込んでくるのが見えた。母さん、どこから電話かけてたんだ?
「俺、行くわ。やっぱ、これ、よろしく」
俺は二人の前に食べかけのハンバーガーを投げ出すと、店の外に駆けだしていった。
集中治療室に、じいちゃんはいた。
俺と母さんは、割烹着のようなものを着せられて、ようやくその部屋に入ることを許された。小柄な俺に渡されたそれは、何故かLサイズで、ぶかぶかで格好悪かったけど、そんなことには誰も構ってなかった。
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