君にベタ惚れ

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 ベッドにまっすぐ横たわったじいちゃんを、コードやらチューブやらがたくさん取り巻いていた。じいちゃんが改造手術でも受けてるように見えて、いろんな意味で俺はどうしようかと思った。 「亮。母さん先生と話してるから、おじいちゃんについていて」 「わかった」  ピンクの制服の看護師さんたちも忙しいらしく、ちょうど誰もいなくなったのをいいことに、俺は近くにあったパイプ椅子をベッドに寄せると、じいちゃんの枕元に座った。でっかい機械が邪魔だったけど、これが今のじいちゃんの命を支えてくれるのかと思うと、どかすわけにもいかない。  何をどうすればいいかわからなかったけど、さっき母さんがしていたように、じいちゃんの手をそっと握ってみた。子供の頃は大きくてごついなぁと思っていた手は、俺の手の中で、ずいぶん小さく、しなびて感じられた。それに、とても冷たかった。 (……じいちゃん、死んじゃうのか?)  うちは俺が小学校に上がるときに両親が離婚して以来、ずっと母子家庭だった。母さんが仕事の都合で俺のことに手が回らなくなると、よくじいちゃんが俺の面倒をみてくれたっけ。夏休みの工作を手伝ってくれたのはじいちゃんだったっけ、じいちゃんの作るカレーはうまかったなぁ、とか思い出しながら、涙がこぼれそうになるのを必死にこらえる。     
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