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とてもきれいな魚だと俺は思った。体も長いヒレも、海のように真っ青で、全部のヒレの端だけが、まるでテープで縁取られているようにまっ白だった。
ゆらゆらと水の中で薄いヒレを揺らすその姿は、俺をうっとりさせた。ヒレが揺れるたびに、普段は見えない水色のキラキラした反射が見えるのが、とてもきれいだった。
いきなりガチャガチャという音がしたのであわてて振り返ると、母さんが玄関に立っていた。
「あれ? 母さんどうしたの?」
「スマホのバッテリー切れたから、一回家戻ろうと思って。それに、おじいちゃんの使ってたアドレス帳も欲しかったから。ちょっと、亮、私が言った通帳とかは?」
「あ、ごめん。まだ見つけてない」
「しょうがないわね! ……ま、アンタおじいちゃん子だったから、悲しいのはわかるけどさ。家の方にサチ姉さんとか来るから、その顔見せたくなかったら、ちゃんと洗いなさいよ」
俺はあわてて顔をこすった。さっき泣いたままで色々してたから、ひどい顔になってるみたいだ。おまけに涙のせいか、肌がひりひりしてる。
「母さん、俺、じいちゃんに、この魚のこと頼まれたみたいなんだけど……」
「え? 何、さかな?」
「最後に、じいちゃん、俺に『さかな、頼む』って言ったんだ」
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