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翌朝、友紀の絶叫する声と共に目が覚める。すぐに家の廊下を駆ける足音が聞こえてきて、俺の隣で眠る絵美の元へとやってきた。
「お母さん! がんがなおるおクスリだよ! サンタさんに頼んだら、プレゼントしてくれたの! 早く飲んで!」
「あらまぁ、本当ね! ありがとう」
そう言って、絵美は娘から栄養ドリンクの入ったがんがなおるクスリを受け取ると、プシュッという軽快な音を立てて蓋を開け、一気に流し込んだ。
「ね? なおった? がん、なおった?」
「うん! すっかり元気になっちゃった」
「よかった! これでお母さんのご飯が食べられるね」
横で聞いていて、娘の言葉に少し複雑な気分になりながらも、喜ぶ娘の姿を見て思わず涙が込み上げてくる。
「私ね! 早く大きくなって、お母さんにお料理教えてもらうんだ! でね、お父さんみたいな旦那さん見つけて、毎日食べてもらうの!」
友紀は、そう言い残して再び駆け足で自分の部屋へと戻っていった。
「うっ……グスッ」
友紀の足音が消えると、絵美の嗚咽が聞こえてくる。
「なぁ……料理、教えてくれないか?」
そんな絵美の背中に、俺は涙を堪えながら言った。
「……えぇ。もちろん。……友紀のこと、頼んだわよ」
タイムリミットは目前。しかし、この日を境に、その日を迎えるまで、我が家の食卓は家族三人の団欒の火が戻ったのだった。
―完―
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