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11月も後半になると、街中にイルミネーションが灯り始める。
タイムセールの惣菜品を目掛け、紀子はショッピングモールを足早に歩く。
隣に目をやると、一緒に歩いているはずの娘がいない。
「ママー!ちょっと来て!!」
少し離れた後方で、娘のマミが紀子を呼ぶ。
こんな風に母親を呼ぶ時。
シチュエーションは、決まっている。
「ママ、マミ、これ欲しい!」
おもちゃをねだる時。
唐突に立ち止まり、手に取り、そして母を呼ぶ。
手には、少し高価な着せかえ人形を抱えていた。
子どもらしい仕草に、紀子の頬は、つい緩んでしまう。
しかし、ここは母親らしく、毅然と対応しようと顔を引き締める。
「マミちゃん、来月は12月…」
「クリスマス!サンタさんに、プレゼントしてもらおう!」
昨年までは、こちらから伝えない限りはキョトンとしていたのに。
「そうだね、サンタさんにプレゼントしてもらおう」
娘の成長に驚きつつ、言葉をオウム返しにした。
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