のんちゃんのサンタさん

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もちろん、クリスマスが楽しい日であるという認識はあった。 母と2人、慎ましく小さなケーキを食べて、歌を歌う。 物心つく以前に父と別れてしまっていた紀子にとって、クリスマスとは、そういう日だった。 「いい子にしてたら、来るんだよ」 「のんちゃん、悪い子だからサンタさん来ないんじゃない?」 「え~、のんちゃん、かわいそう!」 きっと、大人の受け売りをそのまま口にしたのだろう。 「いい子にしていたら、サンタさんは来るよ」 「悪い子のところには、サンタさんは来ません」 決して子どもたちの言葉に悪意のないことは、自分が母親になった今だから分かる。 けれど6歳の紀子は、同級生たちの「かわいそう」という大合唱を背に、泣きながら家へと走った。
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