第1章

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 内部が馴染むまで、塩見は寿々の耳の後ろを優しく掻いてくれたり、頬を撫でてくれたりしてリラックスさせてくれた。  やがて、塩見の緩やかな腰の動きに、寿々の内側がきゅうきゅうと吸いつき始める。  もう一度唇を重ねたのを合図にして、塩見が今までよりもテンポを上げて寿々を揺さぶり始めた。  身体の内側から濃密な快感がせり上がってきて、寿々の口から思わず声が漏れる。 「ふっぁ……あっ……」 「っ……寿々……」  内壁が塩見自身に絡みつくと、塩見の息も弾み始めたのが分かった。自分だけが施されるのではなく、塩見と快感を共有できているのが嬉しい。  寿々が塩見の動きに合わせて腰を動かすと、寿々の昂ぶりが塩見の身体に擦りついた。前と後ろ、同時に押し寄せてくる刺激は強すぎて、涙が溢れた。 「あっ、んん……しおみさっ……」 「……樹生、樹生って呼んで、寿々……!」 「た、たつきさんっ……! 樹生さんっ!」 「寿々っ……!」  塩見の先端が寿々の敏感な奥を突き上げた時、寿々のつま先から耳の先まで甘やかな電流が駆け抜け、高い声が上がる。 「はぅっ……ぁ……あぁっ――!」  寿々はぱたぱたと絶頂の証を吐き出し、それと同時に柔らかな内側が大きくうねり、塩見の昂ぶりを締め付けた。 「くっ……! 寿々、ごめんっ」  塩見は低く唸り、脱力した寿々の身体をきつく抱え直すと、もう一度深く挑んだ。  強すぎる快楽に途切れ途切れの喘ぎを漏らす事しか出来ない寿々だったが、意識を飛ばしそうになりながら塩見の背中に手を伸ばした。  密着した肌と肌の境目がどんどん曖昧になって、融け合うような感覚の中で、寿々は目を閉じる。  塩見の熱い指先が、寿々の額に貼りついた前髪を除けてくれたのを微かに感じながら、寿々はとろりとした微睡みに落ちていった。  二人で過ごす日々はあっという間に進んでいき、明日にはもう新しい年を迎える。  二人は並んでキッチンに立って、正月に食べるためのおせち料理の準備をしていた。  既製品を買ってもよかったのだが、二人分の少ない量だし、箸を付けない品が残るのも忍びないので、邪道だが食べたいものだけ集めたおせちを作る事にしたのだった。 「へえ、伊達巻って家で作れるものなんだな」  栗きんとんを混ぜていた塩見が、寿々の手元を覗き込んで関心したように声を掛けた。
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