一、 不良になりきれないキャラが弱い、赤雅くん

33/34
前へ
/144ページ
次へ
「……ごめん」 「触れられなくせに、僕を泣かすなよ」 ポロポロ涙を流しながら、僕だって彼を傷つける。 好きで朱雅くんアレルギーになったわけじゃない。 でも、彼だって好きでアレルギー源になったわけじゃないのに。 理不尽に僕に不満をぶつけられて、彼も可哀想だ。 「触りてえんだよ。触りてえけど、神楽が世界で一番、どんなやつより大切だから触れないんだよ」 「……ううっだからって、だからって、後輩に〇〇させたり、うっ」 「あー、もう、泣くなよ! お前が泣くと、抱きしめたくなるだろうが!」 髪をくしゃくしゃと両手で掻きまわした後、急に朱雅くんは窓を見上げた。 そして窓の端にまとめられていたカーテンを、ぶちぶちと引っ張って外していった。 カツンカツンと、仕掛けていた盗聴器や盗撮カメラを床に落とすのも気にせずに、カーテンを外すと、僕の頭の上にかぶせた。 「わっ」 太陽に干された匂いと、埃臭い湿った匂いが同時に僕を包んだ。
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

404人が本棚に入れています
本棚に追加