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「朱雅くんの匂いがしないね」
カーテン越しに抱きしめられても、朱雅くんの匂いも体温も分からない。
強く抱きしめてほしいのに、ふんわりやんわりと包み込むように優しく触れる。
「強く抱きしめたら、アレルギーが反応してしまうかもしれないだろ」
「……まあ、そうだけど」
だから僕は抱きしめ返せない。
抱きしめ返せない。
「僕が抱きしめたら……お互い死んじゃうよね」
「まあ、な。お前だけ一人を死なせるつもりもねえし」
「……一緒に死のうって言ったら、抱きしめてくれるの?」
後輩に処理を頼むぐらい。年相応に健全にエロい癖に。
僕に触れないで、馬鹿みたいな行動で紛らわして。
ねえ、抱きしめてって言ったらどうするの?
「死ぬのも一緒って最高だけどさ。でも俺は」
少しだけ、カーテン越しに彼の手が強くなった気がする。微かに、だけど。
「やっぱ神楽とエロいことするまで死にたくないなあ」
朱雅くんは、今日も朱雅くん全開だ。
そして僕は、――そんな君に今日もアレルギー。
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