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『ごめんね。朱雅くん、ごめんね。ごめん。ごめんね』
思い出されるのは、あの日。
俺のために泣いてくれる神楽の顔。
俺の腫れた両手を小さな手で抱きしめて、わんわんと泣いてくれた。
俺は、神楽のおはようからおやすみまで盗撮、盗聴してるけど、あの日の泣き顔を写真に収められなかったことだけは、きっと死ぬまで後悔すると思う。
泣かなくていいんだ。俺が悪い。俺が悪かったんだ。
あの日泣いた神楽は、次の日、合気道と空手とボクシングを習いだした。
空手以外は三日で止めてしまったけれど、あいつの目からは本気の炎が燃え広がっていた。
「あーあ」
等身大神楽の抱き着き枕を抱きしめながら、俺はベッドでゴロゴロと回転する。
いつか、神楽とあんなことやこんなことをして『シーツの海に、神楽の髪が泳ぐ』とかエッチな描写のために買ったキングサイズのベッドで、一人さみしく盗撮した神楽に興奮することしかできない。
『ごめんね。僕、朱雅くんアレルギーなんだ』
あんなに可愛く泣かれてそう言われたら、俺は簡単には死ねないよな。
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