二、切なさと愛しさと下心と。

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「……全く一緒に居られないよりは、前進できるんじゃないかなって思ったんだ」 言い終わらないうちに、神楽の両目にじわりと涙が浮かぶ。 「――泣くなよ。抱きしめたくなるだろ」 触れたくなる。涙を舐め取りたくなる。ボトルに入れて飾りたくなる。もっと泣くなら、その涙を一滴残らず飲み干したくなる。 ――欲望が止まらなくなる。溢れて、理性が負けてしまう。 「急がなくていい。焦んなよ」 「だって、朱雅くん、たまに本気で犯罪者みたいに気持ち悪いし」 泣きながら、俺の盗撮や盗聴について本音を吐露しやがった。 まあそう思われるように頑張ってるんだけど。 「お医者さんの判断でたまにアレルギーの原因を少しずつ食べて慣らしていくってあるでしょ」 「あれは医者にちゃんと指導してもらうからできるの。でも俺らには、その判断を的確にできる医者はいねえよな?」
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