二、切なさと愛しさと下心と。

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Side:梅田 神楽 荒療治はしない。 朱雅くんははっきりそう言っていた。 じゃあ、このままでいいのか。朱雅くんからは今すぐにでもアレルギーをどうこうしようとするやる気が感じられなかった。 なんというか上っ面だけで、あの好き好きっていう行動が嘘くさく見える。 ……僕も、朱雅くんの何かを持ち歩いて、免疫力を付けた方がいいんじゃないか。 このまま触れない友人でいいなら、そんな努力しないんだけどなあ。 全然朱雅くんは僕の気持ちを分かっていない。 「神楽ちゃん。耳かきしてあげるよ。膝の上においでよ」 色々と考えていた僕が、ささっとシャワーだけで済ませて飛び出たら、父さんがソファで耳かきをもってスタンバイしていた。 「神楽ちゃん?」 父さんはロシア人のおじいちゃんの血が入っているのでクォーターで、翡翠色の瞳が外国の王子様みたいで、悔しいけれど黙っていればイケメンだ。 黙っていれば、だ。
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