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「ん? 今、何を言いかけたのかな?」
「あか、いや袴! 袴の資料、袴の資料探してから寝る」
「袴? え、どんな資料がいるの? パパが」
「OKグーグルに聞くから大丈夫。部屋に入る、いや部屋に近づいたら、一か月はいってらっしゃいを言ってあげないからね!」
自分でも無茶すぎるとは思うけど、何とか誤魔化した。
父さんは、朱雅くんを毛嫌いしている。
箪笥の門で小指をぶつけるよりも、気づいたら頭にお邪魔していた白髪よりも、朱雅くんが許せないらしい。
何度か、殴り合いのけんかに発展しかかったこともある。
お隣さんなのに、朱雅くんを見るとアサシンみたいな目つきになるから怖い。
あの日の、僕の林檎誤飲事件は、朱雅くんだけが悪くないのに。
僕は泣いて訴えたけど、父さんは許してくれなかった。
なので僕も『パパって二度と呼んでやらないからな!』と、許してあげていない。
朱雅くんに『気持ち悪い』って言っていいのは、僕だけだから。
「……神楽ちゃん、嘘だよー。風呂上がりの良い匂いの神楽ちゃん、待ってー」
……同族嫌悪なのかもしれないけど。
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