正直な指先

2/2
前へ
/2ページ
次へ
「今日は遅くなるよ」  ニーナはソファにでれんと座り、視線はテレビに釘付けのまま。 「今日も、でしょ」  大志の方も振り向かずに返事だけはした。 「そんな言い方するなよ、今業績悪くて大変なんだよ」  ネクタイの結び目を確かめるように、指がそわそわと首元で動く。それから、ついでのように親指で鼻の先をツイと撫でる。 (嘘、ついているときの癖。自分でわからないんだろうか) ニーナは大志と結婚してから、すぐにこの癖に気が付いた。でも、指摘したら矯正されてしまうかもしれない。もう二人で暮らしはじめて10年も経った。いまだに大志のこの癖は治っていない。 (つづく)
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加