秘密の書

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秘密の書

 この世は所詮、神の見る夢に過ぎぬ。  盲目白痴にして、全知全能。増殖を続ける泡沫の集合体。狂った協奏曲を子守唄に、彼はまどろみ、彼の身体を俯瞰して観る。  その身体は多数の三次元宇宙を浸す、四次元宇宙の細胞液で構成される。彼がまどろみの内にいるならば、あらゆる三次元宇宙は存続する。  彼の狂えるアラブ人、アブドゥル・アルハザードは、彼をAzathothと彼の呪われた狂気の書で名づけた。つまり、Azathothこそが宇宙であり、星々であり、光であり、闇であり、死であり、生命であり、我々である。我々が目にした、目にする、目にするであろう全てはAzathothである。  世界の維持には必ずエネルギーが必要であり、Azathothがその身体を維持するには、彼の身体が増殖するよりも早く、不要となった彼の細胞を殺し、エネルギーを循環させる「代謝」の期間が必要である。     
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