秘密の書

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 彼らの降り立った土地、古代から現代に至るまでも氷に閉ざされた不毛の大地。南極と現在我らが呼ぶ彼の大地は、古のものどもにとっては聖地であった。そこに彼らは建造物を作り、Shoggothを作り、街を作り、この星の原初の支配者となったのであった。  しかし、古のものどもがいかに大きな技術を持っていたとしても、何故にShoggothの着想を得たのか。旧約聖書に描かれる通り、彼らの身体を模して作るが道理ではなかろうか。  実は、彼らの前に地球に落下したものがあった。  現在我らが「海」と呼び、「川」と呼び、「湖」と呼ぶものである。すなわち、あらゆる生命の起源、母なるもの、始まりにして終わりと呼ばれる、手足なき塊。象牙の書に記されるその名はUbbo-Sathla。この世に生きる全ての生命の母なるもの。  我らが母は、その身体に生命の種を秘し、静かなまどろみの中で、熱く煮えたぎる原初のこの星を冷やした。その後母は生命の種を抱えたまま眠りにつき、一旦の静寂が訪れたが、そこに現れたものが、先に記した古のものどもである。  彼らの慧眼は、この眠れる海が一つの生命の塊であると確信した。そして、それを信仰するかのようにその生命の種を掬い上げ、その神の姿を模して、しかし、彼らよりも卑劣な存在であることを示すように、液体と個体の中間的な身体を与えたのだ。     
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