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助手席の彼女は窓から見える風景を眺めていた。
雨がパラパラとぱらつき始め、すぐに雪混じりのみぞれになる。
「あれ?降ってきちゃったね」
行く手には厚い雲が空を覆っていて、いつも見える樽前の山が今日は観えない。
寒い日は特に人が屋外を歩いている姿を滅多に見かけないもんだ。
北海道の街頭はどこにいってもそんな具合で、店の前の駐車場に人影を見る程度で、通勤通学時間帯を過ぎたら閑散としている。
根雪がない時は自転車で移動する人もまばらにいて、本格的な冬の装備をしていた。
病院に着くと受付はもう混んでいて、予約受診の夏鈴は機械で受付を通って外来窓口に移動した。
見渡すと8割が年寄りばっかりな中、循環器内科に番号を呼ばれて部屋に入った。
細長い診察室の大きな机の前に医者が座って待っていた。
二つ用意された椅子に腰をかけて、説明が始まった。
耳慣れない専門的な言葉で説明され、それからわかりやすい例え話で説明を受ける。
奇形の一種だそうで、異常と言えば異常だけど命に係わるものじゃないっていうオチだった。美鈴さんの読み通り、人体は僅かでも個体差がある以上、平均値ではない場合において詳しく調べておく必要があるだけだろう、という。それならそれで一安心だから。
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