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その後は、オレに触れる事はなく、
紳士的な対応だった。
脱衣場で、オレを下ろした後は、
入浴している間に、タオルや着替えを用意しておいてくれて、
風呂から上がって、リビングに入ると、
夕飯のセッティングがしてあった。
メニューは、オムレツ。
ふわとろだ。
何も無かったから、こんなので悪いな。て、言ってたけど、
めっちゃおいしかった。
食後、ソファに座ってコーヒーを飲みながらテレビを観た。
隣に座ってる藍は、テレビじゃなくて、オレばかり見てる。
「何?」と、照れ隠しに突っ慳貪に訊くと、藍は、「萌袖にマグカップ…いいね」
と、オレの目を真っ直ぐに見て囁いた。
藍が壊れちゃった…。
続けて、「泊まってくだろ?」と、訊いてきたけど、
ほぼ確定みたいな…一応訊いておく的な言い方だった。
そんな些細なことが、妙に嬉しくて、
緩んでしまいそうな口元を
マグカップで隠しながら頷いた。
日付が変わりそうな時間に、お風呂に入りに行った藍。
寝てていいって、言われたけど、
落ち着かなくてベッドに腰掛けて、待っていた。
暫くすると、浴室の扉が閉まる音がして、足音が聞こえてきたので、
オレは、床を這いながら、そっと梯子の降り口まで行って、リビングを見下ろしたら、
風呂上がりの藍が、肩に掛けたバスタオルで髪をワシャワシャ拭いているところだった。
まだ汗が引いていないのか、上半身裸の藍…。
なんでしょ…このドキドキ…。
この背徳の匂いがする高揚…
藍のこんな姿は、家で見慣れてるはずなのに、
こんなに、ドキドキするのは、盗み見てるから?
オレと居ない時、どんな風に過ごしているのか…
そんな姿を垣間見てるような…
あっ…ここに来てからずっと、いつにも増して胸の高鳴りが激しく、なかなか鳴り止まなかった。
それは、藍のプライベート空間に入れてもらえたから…?
「…愛?」
うっ…やばっ…見つかった。
藍の口角が上がって、一言。
「…スケベ」
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