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結局、北本君が話してくれたのは、そこまでで、オレも、それ以上は訊かなかった。
「仕上げに…このウイッグをつけて…、はい完成!」
「かつらも、つけなきゃダメなの?」
「一度、校門前で絡まれたって聞いて…ね。この方が、わかりづらいでしょ?」
そっか…
「自分の姿、見てみる?」
そう言って、姿見の前まで誘導してくれた。
鏡に映りこんだ自分の姿は、
うっ……すご…っ…オレ
「女子高生になってる…」
黒髪のロングのかつらをかぶってる自分は、オレじゃなかった。
「メイクも、紫津木好みのナチュラルメイクにしてみました」
藍の好みか…
鏡の中の女の子をまじまじと見つめた。
「ねぇ…藍の彼女…て、みんなこんな感じだったの?」
努めて明るく、冗談っぽく訊いてみた。
「うーん…彼女…ていうか…」
「アイツ…彼女なんていなかったよ」
え…っ?
「まあ…不特定多数の…溜まったら出す…みたいな」
「ちょっと透!」
「え?あっああ大丈夫だよ。 今は、愛ちゃん一筋だから…ね?」
そう言えば、そんなような事…藍も言ってたな…。
「それじゃ行こうか?」
と、オレの前に拳を出してきたので、
おずおずと拳を合わせると、
柔らかい微笑みをオレに向けて、オレの肩に手をかけながら歩き出した。
「あっ。 話すの忘れてたけど、愛ちゃんにもサプライズがあるから、楽しみにしててね」
と、オレを見下ろしてウインクする北本君…。
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