2 向川祭

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「え?! いや?!……あ…っそう…そうなんだ。 最近、つきあい始めたばかりで…悪ィな」 「べつに…‥。これで、貸し借り無しな」 「んな事言うなよ。みずくせぇな」 「離れろ。気色悪い。それより…」 「ん?」 「傍にいてやれ。彼女、震えてるぞ」 「え…っ?」 え…? 自分の掌を見てみる。 じんわりと汗をかいているそれは、自分の意志とは無関係に小刻みに揺れていた。 確かに怖かったけど… こんなに…? オレ…ヤバくない? オレ… その時、肩に誰かが触れてきて、 反射的にビクッとなるオレ… と同時に、スパーンと小気味良い音が響いた。 「痛ぇ!何すんだよ」 真横をそーっと目だけで見ると、 北本君が頭をさすっていた。 「いきなり触ってんじゃねぇよ。怖がってんだろ?了解得てからにしろよ」 「わーったよ」 藍… 藍… 振り向きたい…! けど… 「なんか…オレでごめんね…」 北本君は、オレにだけ聞こえるように、小声で話しながら、そっと、肩に触れて来た。 「紫津木、悪ィ。ちょっと彼女、中庭にでも連れてくわ」 「おお。いいぜ。ちゃんと優しくフォローしてこいよ」 北本君は、オレが藍に見られないように、自分の身体に隠しながら教室を出た。
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