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「え?! いや?!……あ…っそう…そうなんだ。 最近、つきあい始めたばかりで…悪ィな」
「べつに…‥。これで、貸し借り無しな」
「んな事言うなよ。みずくせぇな」
「離れろ。気色悪い。それより…」
「ん?」
「傍にいてやれ。彼女、震えてるぞ」
「え…っ?」
え…?
自分の掌を見てみる。
じんわりと汗をかいているそれは、自分の意志とは無関係に小刻みに揺れていた。
確かに怖かったけど…
こんなに…?
オレ…ヤバくない?
オレ…
その時、肩に誰かが触れてきて、
反射的にビクッとなるオレ…
と同時に、スパーンと小気味良い音が響いた。
「痛ぇ!何すんだよ」
真横をそーっと目だけで見ると、
北本君が頭をさすっていた。
「いきなり触ってんじゃねぇよ。怖がってんだろ?了解得てからにしろよ」
「わーったよ」
藍…
藍…
振り向きたい…!
けど…
「なんか…オレでごめんね…」
北本君は、オレにだけ聞こえるように、小声で話しながら、そっと、肩に触れて来た。
「紫津木、悪ィ。ちょっと彼女、中庭にでも連れてくわ」
「おお。いいぜ。ちゃんと優しくフォローしてこいよ」
北本君は、オレが藍に見られないように、自分の身体に隠しながら教室を出た。
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