1 藍の隠し事

6/9
前へ
/86ページ
次へ
次の日、北本君が電話をくれたのは、夕方近くになっての事だった。 『ごめんね。思いの外忙しくて。 紫津木パワー舐めてたわ』 「え…っと…?」 『ああ、ごめん。きちんと説明してなかったね。 実は、今日と明日…』 『オイ!北本!まだ仕事終わった訳じゃねぇんだぞ。 女に電話なんかしてんな!』 『違ぇわ、ボケ!』 え?…今の 「藍?」 『ん? ああ、そうだよ』 「なんか忙しそうだね」 藍の声だけじゃなくて、複数の怒号が飛び交っている。 『場所変えるね』 暫く北本君の息遣いだけが聞こえていたが、 『この辺でいいか…』 と、北本君が話した所は、本当に周りに人が居ないんだなと思わせるように、雑音が消え、北本君の声が良く響いた。 『実は、今日と明日、向川高の文化祭なんだよね』 「え…っ?と…文化祭…?」 なんか…意表を突かれたというか…肩すかしというか… なんだ…ていうか…なんで隠したのかな? 『今日は、校内向けで、明日が一般公開なんだけど…うちらのクラスの出し物が、まあ…ありきたりの喫茶で…んで…少しでも売り上げを…と思って、厨房希望だった紫津木を無理矢理ホールにしたら、大変な騒ぎになって……』
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

564人が本棚に入れています
本棚に追加