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「藍?」
「オレは、いいから」
「でも…、」
「愛にそんな事させたら、最後までヤりたくなるから」
「オレは、いいよ」
「…ダメだ」
「…どうして?」
「…準備してないから」
「何を?」
「…ゴム…とか? それに…今日は、愛のこと、思いっきり甘やかしてぇんだ」
何か…上手くはぐらかされた気がする。
「風呂…入るだろ?」
オレが頷くと、クシャッと笑って、
「この部屋の難点は、風呂場までお姫様抱っこしてやれねぇとこかな」
ぇ…
何だろ…なんか…胸がチリチリしてきて…
「風呂入れてくる」と言って、立ち上がった藍の腕を掴んでしまった。
「…愛?…どした?」
ん?どした?オレ…?
チリチリだけじゃなくて、モヤモヤもしてきて…
「あ…」
藍は、オレをベッドに寝かせて、布団もかけてくれた。
「風邪引くからな」
そう呟いて、立ち上がろうとした時、再び藍の腕を掴んでしまうオレ。
「本当に、どうした?」
愛おしそうに、オレを見てくれる藍。
それだけで十分なはずなのに、このモヤモヤは…
「…最後に、藍が抱いた女性って、どんな人?」
「あ?」
オレ、何訊いてんだ?
本当に、馬鹿じゃないの?
「その人も、ここで抱いたの?」
うわぁ…っ…何…?
でも、堰を切ったように止まらなくて
「ホテル?ホテルで抱いたなら、お風呂までお姫様抱っこしたの?」
オレ…何訊いて…
でも…一番気になっていた疑問が、頭に浮かんだ。
浮かんだだけなのに、涙が滲んできた。
「その人は…オレの知らない…藍の表情を…知ってる…の?」
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