564人が本棚に入れています
本棚に追加
「…そうだな」
重たい沈黙の後、最初に発せられた言葉が、それだった。
…ぇ…?
ま…そりゃ…そっか…そう…だよね…
余計な事訊いて、当前の答えが返ってきて…
なのに、何で?…何で、視界が滲む?
「…そう…」
やっと絞り出した声。
オレは、今の感情を知られたくなくて、背中を向けて、布団を頭から被った。
今までのオレなら、こんな事訊かなかった。
つきあってた女性がいたことぐらい…わかってたことじゃん。
それをオレも受け入れてたんじゃないの?
オレ…我が儘になったのかな…?
藍の全てが、欲しくなっちゃったんだ…
女性達は、当たり前のように抱いてもらえてたんだよね…
はぁ…オレって最低。
ちょっと抜いてもらっただけで…
どんだけ独占欲強いんだよ。
「なあ…何か勘違いしてねぇか?」
「うん…そうだね。もう我が儘言わないし…変な事も訊かない…ね」
と、背中を向けたまま、精一杯の明るい声で答えた。
「愛?」
そんな優しい声で呼ばないで。
「…こっち向けよ」
向ける訳ないじゃん。
こんな独占欲丸出しの顔なんて…
背後で、小さくため息をついたのがわかった。
藍にため息をつかせてしまった自分が嫌になっていたら
ふわっと髪を撫でられた。
大きな手と温かな体温に、また涙が溢れそうになる。
「それじゃ…そのままで聞いてくれ。
前にも言ったと思うけど、愛はオレに、何でも訊いてくれて、構わないんだからな。 遠慮なんかすんな。我が儘も、むしろ、もっと言って欲しいくらいだ」
藍…
「ただ…正直…、この話に関しては、触れたくなかった…。 オレ…お前に会うまでは、女の事、性欲処理の対象にしか見てなかった。 だから…たぶん…オレは…女達の事…
道具を見るような目で…見てたと…思う…」
最初のコメントを投稿しよう!