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  ゴールデンウィークの賑わいが去った平日ではあったが、それでも横浜の中華街付近には人出が多かった。  PC(パトカー)のハンドルを握る立石広人は、制限速度を守りながら、視界の右側に入って来る路上駐車の車両や歩道を行く人々を注視していた。  左側のゾーンは助手席に座るバディの中野健太が目を配っている。  右前方に中華街への入り口のひとつである朝暘門が見えてきた。  広人と健太が勤務する神奈川県警みなと中央署の管轄は、中華街や港の見える丘公園など横浜の観光エリアが中心で、トラブルや犯罪が起きやすい場所でもあった。  この地区は横浜の広告塔としての役目もあるため、事件などが起きると、メディアに大きく取りあげられる事が多く、犯罪を未然に防ぐことが強く求められた。そのため地域課に属する署員は巡回に力を入れている。広人は健太と組んで、主にPCで管轄地域を回っていた。  日射しは暖かく、街路樹の葉が青く茂っている。  こんな気持ちのよい日は、何事も起こらず無事に過ぎてほしいと広人が思った瞬間、緊急無線が鳴った。 「至急、至急、こちら神奈川県警本部。不審車両が自動車警ら隊の職質を振り切り、現在、中区中華街方面に逃走中。近隣巡回中のPCは応答せよ」 「広人、こっちに来るぜ」  健太が無線機をつかむ。 「みなと中央2から本部。現在、不審車両逃走方面、巡回中、至急向かいます」 「本部からみなと中央2、了解。当該車両は、紫と黄色に塗装した派手なワゴン車。自ら隊が追跡中」 「自ら隊振り切るってことは手ごわそうだな」  健太が広人を見た。 「望むところだ」  広人はハンドルを切り、脇道で車をUターンさせ止めた。その場所からだと幹線道路が見渡せる。
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