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「『ただ』・・・何?」
王は・・・『秋人』は全てを見透かしているかのように微笑んでいた。
いや・・・きっと俺が何を言おうとしているのかコイツは気づいている・・・。
「何もするな。俺は田代 友利のなんだ」
俺は俺に抱きついてきている『秋人』を払い退けて風呂場の戸を開けた。
戸を開けると同時に風呂に込もっていた湯気が流れ出てきて視界を白く染め上げた。
それに俺は僅かに目を細め、中に入り、溢れている風呂の湯を止めた。
「病むほどに惚れさせられた・・・そんな感じだな」
「お互い様だよ。俺も友利もお互い様」
俺の言葉に『秋人』は『ははっ』と笑った。
まるで俺を馬鹿にするように・・・。
だから俺はシャワーを流しつつ、そろそろと中へと入って来た『秋人』を横目で見つめ見た。
「『お互い様』? そんなはずないだろ? 純真無垢な人間ほど怖いモノはない」
俺を見てそう言った『秋人』の目はゾクリとするほど冷たかった。
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