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黒猫と感情欠落王子。
「久しぶり」
そいつは通り過ぎ様にそう俺に声を掛けてくると俺の真後ろの席に座り、すぐに店員を呼んでホットコーヒーを一つ、頼んでいた。
俺の真後ろの席に座ったそいつからは相変わらずあの香水の香りがしていた。
俺はあえてそいつの言葉に何の返事も返さなかった。
「無視をするなよ。不機嫌か?」
クスリと笑ってそう言葉を続けて掛けてきたそいつに俺は『別に?』と言葉を返してテーブルの上に置いていたスマホへと手を伸ばし、意味もなくLINEなんかを開いてみた。
未読件数29・・・。
そのほとんどが犬からのだった。
「・・・俺の犬・・・あんまイジメないでね。大切にしてんだから」
俺はそんな心にもないこと言って未読のLINEフォルダを開いてみた。
「・・・犬?」
そいつのその言葉に僕は小さな溜め息を吐き出した。
「アンタなら簡単に察しぐらいはつくでしょ? 馬鹿なゴールデン・レトリバーみたいな男」
俺のヒントにそいつはまたクスリと笑って『春海のことか』と呟いた。
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