0日目 プロローグ

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0日目 プロローグ

橋本直人は夢をみていた。 特別散らかっているわけでもない、取り立ててセンスが良いわけでもない、ごく平凡な自室で、幼馴染みの少年と肩を寄せ合って何かの冊子を覗いている。 話し声はごく穏やかで、何と言っているのかまでは聞き取れない。 だけど、視線を交わしてはこぼれる笑みを見れば、ふたりが信頼し、心を寄せ合っているのが分かる。 これは夢だ。 あまりに現実と違いすぎて、夢の中でもそうだと分かってしまうほど、直人にとって都合の良い夢。 だって本当は、ふたりはそんな関係じゃない。 幼馴染みの少年ー…遠野静は、もうとっくに直人に対して、正面から笑いかけてくれることなどなくなってしまった。 顔を合わせれば、口うるさい小言か嫌味ばかりで、ここ最近はしかめっ面しか見ていない。 だけど直人は静とまたこうして昔のように仲の良い幼馴染みに戻りたかった。 このやさしい夢から目覚めたくない。 そう願っても、少しずつ意識が遠のいていく。 どうやら朝は近いらしい。 せめてもう少しよく見ようと目を凝らすと、夢の中の直人と目が合った。 目を見開いて、驚いた顔をしている。 何を驚いているんだろう。 そう考える意識も夢と現実の狭間でぐずぐずに解けていく。 寝転がった床はひんやりと冷たく、頬を撫でる風が気持ち良い。 濃紺のカーテンが翻り、視界を遮ったところで、意識がなくなった。
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