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1日目 朝
腹に降ってきた重い衝撃により、健やかな眠りは遮られた。
「っぐ、うぅぅ、このぉっ!」
最悪の目覚めを提供してくれた犯人の足を掴んで持ち上げる。
黒く美しい毛並みを持った隣家の飼い猫であるビリーは、足を掴まれても涼しい顔で前足の毛づくろいをしている。
せっかく、良い夢を見ていた気がするのに。出来ることならもう少しまどろんで、余韻に浸りたかった。
昨夜は今日から始まる期末テストのために遅くまで勉強していたせいで、眠たくて仕方ない。
その上七月の陽はすでに高く、起きぬけにこの暑さは堪える。
エアコンをつけずに寝ていた直人は寝汗で張り付いた髪を掻き上げ、目をこすった。
恨みがましく腹の上でくつろぐ黒猫を睨んでもしょうがない。
握っていた足を離しなめらかな背中を撫でてやると、ビリーは気持ち良さそうにからだを伸ばした。
「あのなぁ、毎朝毎朝、おれの腹をトランポリンか何かと勘違いしてない?ったく、暴力的なところだけはお前の飼い主にそっくりなんだから」
「俺と何が似てるんですか?」
窓の外からかけられた低い声に、直人はぎくりとからだをこわばらせた。
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