1日目 朝

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サドルにまたがった静の肩が珍しく落ちていた気がして、いい気味だと舌を出した。 *** 直人の通う緑ヶ丘高校は、今日から四日間の期末テスト週間に入る。 初日である今日は二科目しかなく、ホームルームが終わっても、まだ昼前だった。 「直人、部室で勉強してく?」 放課後、ガタガタと騒々しく席を立つ生徒の間をすり抜けて、同じ部活の田辺優が声をかけてくる。 自分より小柄でやさしげな優ににっこり笑いかけられると、テストの間に疲労した脳が癒されるのを感じた。 「うん、行く」 直人の所属するバスケ部は仲が良く、部活のないテスト週間の間、部室で勉強するのが自然と恒例になっていた。気の置けない仲間と和気藹々と勉強するのは楽しいし、去年改装したばかりの部室は部員みんなの自慢でもあった。 かばんを担いで立ち上がり、ふたり連れ立って部室棟へ向かう。 部室を覗くと、すでに何人かの生徒がすでに来ていた。 「お疲れさまです」 「おー」 先輩や後輩に適当に挨拶しながら、空いている席に座る。 ここに勉強しに来るメンバーは、テスト期間に全く勉強しないほど、テストを捨てたわけでもなく、かといってがむしゃらに机にかじりつくほど熱心でもない。ちょうどよい緩さが居心地よく、まったり勉強できる。     
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