第14章 神野くんとわたし

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なんて受け応えたらいいのか。よくわからないまま素直に頷く。彼の使う一人称が『僕』であることはとりあえず判明した。 彼の独特のペースに戸惑ってるのはわたしだけみたいで、他の三人はあまり気にする風もなく普段通りどんどん料理やお酒を注文して賑やかに喋った。神野くんにも分け隔てなく話しかけて、彼も案外ごく普通に答えてる。そういうやり取りをぼうっと眺めてたたらだんだん彼が普通の人に見えてきた。 「まな、ちゃんと食べてる?今日も一日仕事してきてお腹空いただろ。まなはいつも頑張り過ぎだよ。…ほらこれ。まな、好きだろ」 「空きっ腹に酒ばっかだとまた酔っちゃうぞ。まなはアルコール弱いからな。脂っこいものばっかだと進まないか。野菜サラダとか、ご飯もの行くか?」 上林くんと長崎くんが身を乗り出してわたしの世話を何くれと焼く。料理が次々取り分けられて目の前に皿がずらりと並ぶ。いつものことだけど。 「こんなに食べきれないかも…」 「しょうがないなぁ、まな。しっかり栄養取らないと。また体重落ちちゃうぞ。体力使うんだから、エネルギー補給しなきゃ」 機嫌よく楽しそうにその口から出てくる言葉もいつも通りだけど。部外者がいるこの場でと思うとちょっとはらはらする。『体力使う』って何に?って思われるじゃん。     
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