第13章 愛ある生活

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思えばこの辺りからリュウに対してのわたしの態度に徐々に変化が生じ始めたんだと思う。全く別々のところで心と身体を分けて満たしてそれで平気でいられたのに、目の前で双方が交錯した瞬間を見てからやっぱりこんなことは長くは続かないな、とどこかで腹を決めたのかもしれない。 高松くんたち三人の方は完全に確信犯でなかなか見た目は格好いい彼じゃん、と後で平然と言われた。恐らくリュウ本人を一度自分の目で見たい、というのが行動の動機だったんだと思う。 「椿原荒物店の息子さんなんだ。シャッターがっつり閉まってたな。椿原、リュウ…?」 「りゅうま。椿原流真っていうの」 後日改めて問われて、面倒くさくなって素直に教える。隠したって知ろうと思えばいくらでも調べられるだろうし。接触されるくらいなら名前くらい最初からオープンにしておいた方がいい。 「大学院生なんだってね。今時将来もなかなか大変そうだな。それでまなが通って飯作ったり身の回りの世話してあげてんの?」 上林くんにそう言われてさすがにぎっと見上げる。 「あの、彼は。…ただの友達だから。そっとしておいて。別にもう、あの人とどうにかなるとは思ってないの。そんな気ない。だから…」 こんなわたし。彼には最後まで知られないままにさせて。…お願いだから。 俯いて小さな声で呟く。 「…接触、しないで」 高松くんが傍から手を伸ばしてそっとわたしの頬に手のひらを添えた。     
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