第13章 愛ある生活

31/35
前へ
/78ページ
次へ
「大丈夫だよ、まな。そんな心配する必要ない。俺たち、奴の顔を一遍見てみたいとは思ったけど、そりゃ。俺たちのことを洗いざらいぶちまけて溜飲下げたりしない。そんなことしたら傷つくのはまなだし」 「どうせ大したことないだろと思って見に行ったけど。外見はまあまあかな。まなって実は面食いかよって思ったけどさ。…でもなんか、坊ちゃんぽいっていうか。あんまり苦労した感じのない奴だよな。まあ、何言っても嫉妬含みってか」 上林くんも明るい声で混ぜっ返す。長崎くんが安心させるようにぎゅむ、とわたしを抱きしめた。 「そんな不安げな顔しないで。言っただろ、まなの意に反することはしないよ。そんな真似あえてしなくてもあいつにはまなは手に入れられない。まなの良さを知ろうとしない男には絶対に君を渡さないから。…その気になればあいつには何年間も、いくらでもチャンスはあったんだ。今更後悔しても遅いんだよ」 「うんまぁ。…大して後悔してもいないんじゃないかと」 もそもそと呟く。この前泊まった時、朝なかなか起きない彼にいっそキスしてやろうかなと猛然と下心が湧き上がった。別にこの人だって初めてってわけじゃないだろうし、減るもんでもないし。 もう終わりが見えてる関係だし。いつ二度と顔を合わせなくなってもおかしくない。わたしの七年間の思い出に、今更だけど一度くらい、軽く触れるだけのキスならさせてくれてもいいんじゃない…。     
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加