第13章 愛ある生活

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そう思ってゆっくりと唇を寄せたらさっきまで全く目を開けようともしなかった同じ人間とは思えないくらい素早い動作でわたしの腕から転げて抜け出て即座に起き上がった。余程わたしにされるのが嫌みたいだ。 あれは結構本気で傷ついた。男の子からあそこまで徹底的に拒否されるなんて。普段この三人に滅茶苦茶に求められてる分無意識に生まれてたらしき微かな自惚れを久々にこてんぱんに叩きのめされた気がした。 この人たちがたまたま特殊なだけで、一般的な目からしたらわたしの魅力、微塵も上昇してないのかも…。 そうは言っても。この人たちの手に落ちたあの時以来、こっちの世の中を見る目が若干変わったせいか、それともあんなことを裏でしてる分変な崩れた隙がどこかに生じてるのか。目敏い人たちが何かを察知してるせいかもしれないんだけど、会社でもこそっと誘いをかけてくる男の人がたまにいる。滝沢さん、休みの日何してる?とか、彼氏とかいるの?作る気ないの?とか。 でも、思えば少し前なら単に質問された、と受け取ってごく普通に答えて済ませてただけのような気もするし。単純な質問なら二人きりになれる瞬間を狙ってこそこそと近づいてきて意味ありげに声を潜める必要なんかないわけで、そうか、これが男の人からのちょっかいって奴なのかなと認識を新たにしたくらいだから。ただ今まで気づかなかっただけって可能性もある。     
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