19人が本棚に入れています
本棚に追加
その日は仕事の切れ目がよくて割に早く着いた。わたしはメンバーの中では会社が離れてる方だからいつもは最後になることが多い。この時間だとどうなんだろ、もう誰かいるかな?まさかわたしが最初ってことないよね、とちょっと怯みながら店のドアをくぐる。入ってすぐに全容は見えないけどあまり広い店じゃないから、じっくり見渡せば…。
「あ」
高松くんのクールな整った顔が遠目に見えてほっとする。足早にそのテーブルに向かいながら誰か一緒にそこにいるのを見て取り、ふと違和感が。
男の人だ。でも、上林くんでも長崎くんでもない。こちらに背を向けてるから顔は見えないけど。
どう考えても体格が違う。上林くんはひょろっと上背があって細身、長崎くんはがっちり肩幅が広い。その人はそのどちらでもなかった。絶対に。
高松くんも背が高くはないけど、彼は更に小柄に見えた。肩幅も狭く、言うなれば華奢だ。女の子…、には、見えないけど。一応。
でも見えてきたその頭。さらさらの綺麗な茶がかった髪だ。短く刈り込んでいてもその艶やかさは見て取れる。
近くに寄るにつれ、だんだん自信がなくなる。髪型と服装で普通に男の子、と思ったけど。
ふと見えた横顔の頬は滑らかで色白。ずいぶんと可愛らしい感じの子だ。…男性だとしたら。
てか。わたしの店内を進む足取りは自然と鈍る。どうして高松くんは平然とした顔で、わたしたちとの待ち合わせの場所で女の子と見紛うキュートな男の子と話し込んでなんかいるんだろう?
「…あ、まな」
最初のコメントを投稿しよう!