第13章 愛ある生活

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その日は仕事の切れ目がよくて割に早く着いた。わたしはメンバーの中では会社が離れてる方だからいつもは最後になることが多い。この時間だとどうなんだろ、もう誰かいるかな?まさかわたしが最初ってことないよね、とちょっと怯みながら店のドアをくぐる。入ってすぐに全容は見えないけどあまり広い店じゃないから、じっくり見渡せば…。 「あ」 高松くんのクールな整った顔が遠目に見えてほっとする。足早にそのテーブルに向かいながら誰か一緒にそこにいるのを見て取り、ふと違和感が。 男の人だ。でも、上林くんでも長崎くんでもない。こちらに背を向けてるから顔は見えないけど。 どう考えても体格が違う。上林くんはひょろっと上背があって細身、長崎くんはがっちり肩幅が広い。その人はそのどちらでもなかった。絶対に。 高松くんも背が高くはないけど、彼は更に小柄に見えた。肩幅も狭く、言うなれば華奢だ。女の子…、には、見えないけど。一応。 でも見えてきたその頭。さらさらの綺麗な茶がかった髪だ。短く刈り込んでいてもその艶やかさは見て取れる。 近くに寄るにつれ、だんだん自信がなくなる。髪型と服装で普通に男の子、と思ったけど。 ふと見えた横顔の頬は滑らかで色白。ずいぶんと可愛らしい感じの子だ。…男性だとしたら。 てか。わたしの店内を進む足取りは自然と鈍る。どうして高松くんは平然とした顔で、わたしたちとの待ち合わせの場所で女の子と見紛うキュートな男の子と話し込んでなんかいるんだろう? 「…あ、まな」     
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