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「そう。結構普通に話したりしてたよ、教室では。ちょっとマイペースだったけど結構個性的で面白い奴だなって思ってた。卒業してからは全然連絡取り合ってなかったけど。…今回、たまたま連絡が取れてさ」
わたしと上林くんの方を向いて説明する。
「中学時代の話になって。懐かしいなって言うから、今度当時の連中で集まるよって声かけてみたんだ。上林はこいつ、知ってた?」
「顔は見覚えがあるし。シンのクラスにいた印象はあるな、確かに。部活は何やってたの」
「最初剣道。二年になった時辞めちゃったけど」
あの顔に似合わない低い渋い声でぼそりと呟く。すごい愛想のいいタイプではなさそうだ。
「最初ってことは、そのあと何か入ったの?」
思わず口を挟むと、彼は黒いつぶらな瞳をちらとこちらに向けた。その表情に感情の色が伺えず漠然と不安になる。わたしもしかしたらちょっと苦手かも、この人。
「…美術部に。自分のペースで作品進められるから」
「ああ、なるほど」
わたしは素直に頷いた。その動機は理解できる。他人にああしろこうしろ言われたり怒鳴りつけられたりするのはわたしも苦手だ。剣道部の練習を見るたびになんか、よくやるなぁと居心地の悪い気分になってたことを思い出した。
そう言うと長崎くんが笑った。
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