第14章 神野くんとわたし

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「なんか消極的な理由だな。でもまならしいや。…まなは神野のこと記憶ある?クラスは別だったんだよな」 「多分。…でも、そうですね。見覚えはあります。確かに」 なんて言っても個性的な人だし。シャンプーのCMに出られそうなくらいさらさらの焦げ茶の綺麗な髪を気にするように短くカットした頭、二十代半ばになっても滑らかな頬。顔立ちも小作りで可愛らしい。小さな唇も柔らかそう。 だけど終始にこりともしないし。声も態度も外見と全然マッチしてない。そのギャップがすごい。 剣道部のち美術部。クラスはずっと別。接点があるとは思えない。でも、やっぱり何となく印象はあるんだよな。わたしはそっと首を傾げる。 ただ単にこの人が目立ってたってことかな。こんな子、今までそう何人も似たような人がいたとも思えないし。 彼はく、と軽く眉を動かした。 「…なんで。敬語?」 そこか。 「ああ、この子はそういう癖だから。あんまり気にしないで大丈夫だよ。しばらくはこれが続くと思うけど」 高松くんが横から割って入った。愛おしそうにわたしの手を取りぎゅっと握られてちょっとびっくりする。いや、よその人の前でそれ? その手を自分の頬に持っていきそっと当てる。高松くんのアルコールでやや火照った頬の温かい感触が手のひらに伝わる。てか、これ。恋人の仕草でしょ。     
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